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提言

「教員に教えるという難題」

日吉ITC所長 種村 和史


 日吉ITC所長を拝命して早4年が過ぎたというのに、keiomobile2の設定も自分では満足にできないほどIT音痴である。業務に関しては、日吉ITC職員の方々を信頼しっぱなし、まかせっきりで、もっぱら会合の席でその御苦労を伺っては感謝しているだけの頼りない所長である。

 ITCは目下、広報活動や情報教育に力を注いでいる。この4年間に限ってみても、学生に対しての情報教育・情報倫理教育を取り巻く環境はずいぶん改善されたと感じる。社会全体にもその必要性についての認識が定着し、後押しする空気が浸透しつつある。多くの学部の導入教育に組み入れられるなど、今後は現在の方向性を維持し発展させていくことで、所期の目標を達成することは充分期待できるのではないかと楽観している。

 次なる課題は、教職員、特に教員に対する啓蒙活動をいかに進めていくかであろう。こちらに関しては、ITCは腰を据えて取り組む覚悟が必要となる。大学教員は研究・教育のために、大学の提供する情報ネットワーク環境をいわば水や電気のように享受しているわけだが、しかし自分が飲んでいる水が、どれだけの手間と費用をかけてきれいな水になって届けられているかに思いをいたせるほどには、あるいは電気は注意を払って使わなければ、感電したり漏電によって火事を起こしたりしかねないものだと理解しているほどには、情報ネットワークについての知識も理解も持っていないことが多い。

 しかし、生活の一部としてネットワーク環境を利用する以上、わきまえておかなければならないことはあり、それをどのように教員に知ってもらうかは、ITCが直面する難題である。学生に対する教育は、教育する側の各学部および各教員が必要性を認識しさえすれば実現可能なのに対して、教員に対する啓蒙は、啓蒙される側の教員自身が必要性を痛感し、自ら学ぶ態度を示さないことには強引に教え込むことはできないからである。そして、得てして教員は未知の分野にゼロから取り組むことをおっくうがることが多いからである(もちろん、みながそうと言っているわけではありませんよ)。

 これについていささかなりとも貢献できればと、ここ数年来、日吉ITCの職員の方々に無理をお願いし、日吉の教養研究センターとの共催でITに関する教員向けの説明会を企画してきた。誰もが知っておかなければならない重要なトピックを、ITCはふんだんに有していると実感した。しかし、内容的には非常に充実した企画でありながら、関心が薄い、聴衆が少ない。ただ、教員向けの啓蒙活動は得てしてそういう結果になりがちなことも経験上知っているので、必要だから聴衆が少なくてもとにかくやり続ける、内容を記録し後から見られるようにしておけばいいと、半分開き直っている。

 学生の教育には長い時間がかかるが、教員の啓蒙はさらに長いスパンで考えなければならない。ITCとして何を伝えたいか、どうすれば伝えられるか、いろいろな部署と協力し知恵を出し合って、少しでも状況を改善させていくことが大切であろう。

最終更新日: 2013年11月12日

内容はここまでです。