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提言

「信濃町キャンパスという特殊性の中で」

信濃町ITC所長 中川 種昭


 信濃町ITC所長を拝命して6年を迎えようとしています。医学部、看護医療学部そして途中から薬学部が加わり3学部の教学機能と、医学部を主体とする研究機能、慶應義塾大学病院という診療機能を支えて行くITの責任者としてはあまりにもその専門知識が少ないことに大きな不安を抱えたまま、ほぼ月に1度三田で行われる会議に出席をすることになりました。その会議で交わされる会話は、ほとんど私には理解できないような専門用語が飛び交い、十数年前アメリカに留学した際に、研究ミーティングで専門用語混じりの英語会話についていけなかったことを想い出すような状況でした。となりの席に座っている事務長の関本さん、途中からは林さんに難しい内容を噛み砕いて教えていただきながら、なんとか皆様の話についていけるようになるために数年の月日を要しました。現在もネットワークの核の部分は理解できるわけではありませんが、私らしくユーザー目線でこのITCに貢献していこうと、今は全体像の大まかな把握につとめ、利用者に便利なサービスができるように努力をしております。

 就任したころ、基本的には、教学機能に関わるキャンパス内のネットワーク接続サービス、パソコン貸し出しを主に業務として行っていました。そのころは無線LANが利用しにくい状況でしたので、基地局を少しずつ増やす事で公共スペースでの無線LANを利用できるようにすることにしました。キャンパス内のどこでも誰でも簡単にインターネットができるような環境にしたかったのですが、信濃町の場合病院があることや、本来あってはならないのですがやりとりされる内容に診療内容等を含む懸念があり、セキュリティレベルを高めるために場所を決めて、無線LANの暗号化を行い、認証した上で利用できるようにしています。

 公共スペースでの無線LAN利用に目処が付いたころ、大きな地震が東日本を襲いました。そのような状況にあっても、キャンパス内のネットワークがきちんと機能していたおかげで、教職員の安否の確認、患者さんへの対応を含め、執行部の指示が短時間で正確に伝わり、塾内に張り巡らされたネットワークの堅牢さに感動しました。縁の下の力持ち的な役割であったITCの重要性が多くの方に認識された出来事であったと思います。

 最近、学生教育の近代化の中で、iPadを利用した授業を行う事が提案され、2013年度の医学部新2年生への配布を皮切りに、毎年新2年生に配布を行うことで、今後2017年度までに医学部2年生から6年生の全学生に行き渡る予定です。そのためのネットワーク設備の整備を行いました。ただ利用者からはiPadのアプリケーションソフトウェアの使用法を含む内容の質問がITCに来る事が予想され、現在のマンパワーでの限界を感じております。また、CBT(Computer Based Test)と呼ばれる、パソコンを使用したテストが行われるようになり、その整備も行いました。定員増も相まって限られたスペースに多くの学生とパソコンの熱が部屋にこもるため、ネットワークの接続以外にも心配事がでています。

 病院については、現在はネットワークの入口と出口の接続サービスのみを行ってきていますが、電子カルテ化や、病室でのインターネット利用、教職員の病院内での無線LAN利用希望など、IT化の波はものすごい速度でやってきています。いままでは独立していた病院部門への関与も期待されるようになり、病院システム部門と協力しながらできる所からお手伝いをさせていただいております。

 あと、信濃町ITCの事務所が図書館の地下1階から、北別館の1、4階に移転がなされ、悲願であった地上進出がなされたことは、末松医学部長のご高配のおかげでありますが、とても嬉しい出来事でした。毎日支えてくださる職員の皆様へ私が実現できたささやかな貢献であったかもしれません。

 もし、今後もこの立場をいただけるようでしたら、より多くの場所で無線LANを利用していただけるようにする事、変遷する医学、薬学、看護学教育へのITサービスのさらなる充実、そして病院への貢献をして行きたいと考えております。そのためには、ITCの専任職員の方の人的増員が必要と考えます。全塾的に、予算削減の中でITCへの予算がかなり厳しくなっています。世の中におけるIT化の波に呑み込まれないためにも、ITCの人的配置の充実を塾執行部の方に真剣にお考えいただきたく切望しております。

最終更新日: 2013年11月12日

内容はここまでです。