• Japanese

提言

安定したサービス提供とは

ITC副所長:楠本 博之


本年度の原稿を書くにあたって、フォルダにあったのに気付いて、過去にITC年報に書いたものを、見返してみました。2012年度のITC年報の提言に、「アウトソーシングとインハウス」という原稿を寄せていました。6年前といえば、この世界では、かなりの昔のことです。はたして、この数年で、ITCを取り巻く環境はどう変化し、外部サービスの有効利用は進んだのでしょうか。

まず、keio.jpでは、G Suiteが使われるようになり、いろいろなサービスが、パッケージとして導入されています。そのほかにも、Web会議システム、授業支援システムなどが運用され、より進んだサービスが提供されるようになりました。これらのサービスは、外部のサービスを利用しているものもあれば、義塾内部で運用が完結しているものもあり、さまざまです。

セキュリティ対策、可用性、拡張性、費用対効果など、いろいろな判断に基き、現在のような運用になっているわけですが、外部のサービスにどれだけ頼るのかというのは、方針決定にあたっての重要な検討項目です。

最近も、大手クラウドサービス業者のデータセンターで障害が生じ、そのクラウドサービスを利用してWEBサービス等を提供している多くの組織に影響がありました。決済システム、SNS、その他の社内システムなど、多岐にわたる業種に影響が及んだという報道を目にした人も多いかと思います。

このようなことが起こると、外部に頼るのはよくないんじゃないかという話が聞こえてくることがあります。しかしながら、冗長なネットワーク接続や、十分な自家発電装置などの設備投資を個々の組織で行うには限界があることも事実で、必要に応じた外部サービスの利用は、柔軟なITシステム構築には、今や欠かせないものともいえます。その上で、組織内でもつべき設備、冗長化のあり方などを工夫していく必要があります。

サービスの快適さと設備の関係で、利用者、とくに学生のみなさんが、サービスを受けるのに設備が十分でないと感じる機会があるかと思います。たとえば、履修申告や、各学期における学業成績のWEB閲覧開始時期における高負荷は、ほとんどのみなさんが経験しているのではないでしょうか。負荷分散のために、成績のWEB閲覧開始時刻を学年等により変えるなどの工夫をしていますが、一斉に閲覧できるようにしてほしいという希望はあるかと思います。このような、年に数回しかない、高負荷な状況でのサービス提供をどうしていくかも課題の一つといえます。年に数回しかない高負荷な状況に対応するためだけに設備投資を行うのが適切かどうかは、議論しなければならないわけで、現在は、異る開始時刻による負荷分散を行っているわけです。継続的な設備増強ではなく、実質的な設備増強を年に数回だけ行えるような工夫も考えられ、サービスのあり方も多様化させていく必要性を感じています。利用者のみなさんも、こういった、特定の時期にだけ混雑するサービスに対して、いろいろな要望を伝えていただけたらと思います。もちろん、すぐに対応できるわけではありませんが、運用する側は気付いていないことも多々あると思いますので。また、成績閲覧の開始時刻による負荷分散などは、そのシステム運用の意図などが、利用者からみても、あきらかですが、場合によっては、説明がないと、なぜそのようになっているかが、わかりにくい場合もあるかと思います。いろいろなサービスについて、なぜ現在の運用になっているかの、ある種の説明責任も、これからのITCは果たしていかなくてはいけないのではとも思います。

最終更新日: 2019年10月3日

内容はここまでです。