• Japanese

提言

教育研究における慶應義塾インフォメーションテクノロジーセンターの役割

ITC副所長:高橋 大志


慶應義塾における教育研究において、慶應義塾インフォメーションテクノロジーセンター(以下、ITC)の提供する機能を使う機会は数多い。例えば、研究において必要となる文献の調査や遠隔地にいる研究者とのWEBミーティング、講義における受講者への連絡など、日常活動のさまざまな場面において利活用が進んでおり、ITCが提供する機能は、円滑な教育研究の遂行において必要不可欠なものになっている。

大学の講義で、私自身は、ファイナンス分野を中心に教育を行っているが、当分野は、ITCが提供する機能の恩恵を最も多く受けている分野の一つかもしれない。ファイナンス分野の中には、企業価値評価や企業のM&A、コーポレートガバナンス、資産運用やリスク管理など、数多くのテーマが存在するが、その中において、株式市場や債券市場といった金融市場を対象とした分析は、ファイナンス分野における主要なトピックの一つに挙げられる。金融市場を対象とした実証分析を行う場合、市場において取引されている実際の資産価格などのデータを取り扱う必要がある。例えば、株式市場を対象とした分析を行う際、分析対象の候補となる企業は数多い。国内だけでも2000社以上の企業が東京証券取引所 市場第一部に上場しており、先進国および新興・途上国などの海外の証券取引所を含めると、分析対象となりうる企業数は1万社を超える。そのため、分析対象の拡張に伴い、膨大な数の企業を対象とする必要が生じる。更に、株式価格の分析を行うためには、株式発行企業の自己資本や売上高などの財務関連指標や各企業の株主構成などといった、より詳細なデータも必要となってくる。このように、金融市場を対象とした分析を行うためには、状況に応じ大規模かつ多様なデータを取り扱う必要があるが、ITCが提供する機能を通じ、それらのデータを効率的に取得することが可能である。更に、その後、分析の目的に応じ、取得したデータの加工集計等を進めてゆく必要があるが、その際、RやPythonなどといったフリーのソフトウェアに加え、ITCが提供するソフトウェアを活用することで、効率的に分析を進めることが可能になる。

ITCの活動に参加して、おおよそ4年の年月が経過しているが、これらの期間において、ITCをとりまく環境も大きく変化してきている。例えば、情報技術や人工知能技術は大きく進展しており、社会的にも大きな関心を集めている。また、ファイナンス分野関連でみると、情報技術と金融の両者に関連したフィンテック(Fintech)などといった用語を耳にする機会も多くなってきた。

ITCのWEBページをみると、慶應義塾ITCの目的について、『義塾に必要な情報基盤を効果的に提供することによって、義塾の教育・研究の発展および義塾の円滑な運営に寄与する』との主旨の記述が示されている。ITCの活動は、近年、その有用性から関心を集めている情報技術や人工知能技術と密接な関連性があり、今後、その役割はますます大きくなる可能性があると考えている。

https://www.itc.keio.ac.jp/ja/about_itc.html

最終更新日: 2019年10月16日

内容はここまでです。